灯りと影
短いエッセイ
夜になると、机の上の小さな灯りだけが部屋を照らす。手を伸ばせば触れられるくらいの明るさで、その外側はゆるやかに影へと沈んでいく。
不思議なもので、光そのものよりも、その光がつくり出す影のほうに、私はいつも心を奪われてしまう。ペン立ての影、開いたままの本の影、そして自分の手の影。どれも輪郭が少しだけにじんで、昼間には決して見せない表情をしている。
影は、光がなければ生まれない。けれど、影があるからこそ、光はそこにあるとわかる。片方だけでは、どちらも意味を持たない。私たちが何かを美しいと感じるとき、その多くは、こうした対比のなかにあるのかもしれない。
明るいことばかりが良いわけではない。すべてが照らされてしまえば、そこにはもう奥行きがない。少しの暗がりがあるから、人は想像し、余白を思い、まだ見ぬものへと心を向ける。
灯りを消す前に、もう少しだけ、この影を眺めていよう。
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そんなことを考えているうちに、夜はいっそう深くなっていた。