人に頼む技術 - コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学 (原題: Reinforcement)
まとめ
- 誰かを助けることで良い気持ちになるためには、自ら望んで支援の手を差し伸べている 主体性の感覚 が不可欠。そのため、主体性を削ぐような頼み方は割けるべき
- 逆に 主体性を得られるような頼み方 をするように注意する。具体的には
- 「誰」に対して「何」を頼んでいるのか を明らかにして依頼する
- 依頼に特別感を出すとより良い(他の誰でもなく「あなた」にお願いしたい)
- 仲間意識 を育む依頼にする。仕事の場合は同じ目標を達成する仲間、家族なら皆の幸福度を高める、など全員のためになることを気づかせる
- 「一緒に」「我々の」という同じ仲間意識を気づかせるようなフレーズを使う
- 頼まれる人の 自尊心を刺激する 依頼にする。普段から感謝を告げたり、信頼関係を作ることで、「自分はよい人間だ」と自尊心を頼まれる側に持ってもらう。またその自尊心に訴える頼み方をする
- 「いつも協力してもらって助かっている」と伝えた上で依頼する
- 頼まれる人に裁量をもたせる
- 「誰」に対して「何」を頼んでいるのか を明らかにして依頼する
- 人は、自分が思っているよりも頼みを断らない。先入観を捨てて、上記を意識して頼んでみよう
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人に頼む技術 - コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学
誰かに何かを頼むのを気まずく感じる理由
- 臨床心理学の実験から、「人に頼むと断られる」と答える割合 > 「実際に頼んで断られる」割合となった。人はほんの些細な頼み事をするのを想像するだけでも不快な気持ちになる生き物
頼むときの気まずさ(不安)の要因
- ステータスへの脅威
- 人は自分の方が尊重されていてほしい。頼みごとをすると尊重が失われそうという不安を感じる
- 確実性への脅威
- 自分の未来を予測したいと考えているが、頼みごとが断られる不確実性に不安を感じる
- 自律性への脅威
- 自分の意思でものごとをコントロールしたいが、頼みごとを行うと他人に任すこととなり、不安を感じる
- 自律性を失うことは、強いストレスを感じる
- 紙とペンがあれば勝手に絵を描いていたのに、「絵を描きなさい」と言われると逆に描きたくなくなってしまう
- 人は「コントロールされている」と感じたくない。期限やプレッシャーも同様
- 関係性への脅威
- 自分が属しているコミュニティから外されるかもしれないという不安を感じる
- 公平性への脅威
- 人との関係には公平性を常に求めており、頼みごとをすることで、その均衡を崩すことにならないかという不安
なぜ、頼んでも断られるだろうと思うのか
アンケートをキャンパス内で依頼するなど様々な頼みごとに関する研究を分析したところ、被験者は成功率を 48%ほど低く見ていた。 つまり、思っていた 2倍ほど頼みごとに実際は成功する。 (読者注: 実際の成功した割合と比較しないと 2倍した結果としてどうなのかがわからない)
人はいい人でありたいと考えている
頼む人は実際にことわられるよりも、より「断られるだろう」と思っているわけだが、この差はどこで生まれるのかというと、
- 頼まれた側が断る負荷
- 助けたことによる気持ちよさ を頼む側は過小評価しているため。
頼まれる側に関する誤解
- 一度断られたら、次も断られる
- 関係性にもよるが、一度断ると次は断りづらい心理が働く
- その心理に漬け込むと関係性が破壊されるかもしれないので注意
- 一度やってもらったら、次は断られる
- フット・イン・ザ・ドア
- 一度受け入れてもらったら、次も断りづらい。営業ではよく使われる手法で、例えば引っ越しの見積もりの際に「無料でお米」をもらうと、見積もり自体も断りにくくなってしまう心理
- 「何かをもらったのに、こちらが何もしない」という 認知的不協和を人間は不快に感じてしまう
- 認知的不協和
- 最初からアンケートを頼むより、「ちょっとお願いできますか?」と小さい頼みごとをしたあとに、「アンケートを取ってまして…」と頼むと断られづらい。多用すると嫌われる
- 頼みごとをすると嫌われる
- 一度頼みごとに答えて感謝されると、次も良くしたいと考える。そうすると、次回も頼まれたときは認知的不協和より断りづらくなる
必要な助けを得る方法
自分が助けや支援を必要としているとき、自分が思っている以上に周囲には伝わっていない。
助けを得るステップ
- 相手に気づかせる
- 仕事中が顕著だが、人はなにかに集中していると周りのことに注意が向かなくなる
- 助けを求めていると相手に確信させる
- 相手が困っていないのに、助けが必要だと誤解してしまうリスクを人は感じてしまう。そのため、「確実に助けを必要としているのだ」と知ることができるとそのリスクを軽減できる
- 助ける側は責任を負わなければならない
- 助けることのできる人がたくさんいると、「自分がやらなくても..」と人は感じてしまう
- 仕事中に「誰かやっといてください」と頼んでも誰もやらない
- 確実に責任を感じるために、「誰に」やってほしいのかを明確にする
- 助けることのできる人がたくさんいると、「自分がやらなくても..」と人は感じてしまう
- 助ける人が、助けを提供できる状態でなければならない
- 神学部の学生ですら、時間が迫っている状況に陥ると助けることに意識が向かなくなる
- 「何を求めていて、どれくらいの助けが必要なのか」をちゃんと説明すること。そして、「適切な量の助けを求め」、もし「求めていた助けと異なっていても、相手の助けを受け入れる」ことが大切
だめな頼み方
ここまでの話で、相手の主体性を削ぎ、責任感を薄め、適切な量以上の助けを求めることは成功しづらい。具体的には、下記のような頼み方を避けるべきだ。
- 共感に頼りすぎる
- 度をすぎた共感を求めると、人は反発を感じてしまう。責任を重く感じてしまうと、その責任を軽減したい、忌避したい (自律性を取り戻したい) と感じる
- やたらと謝る
- 人はコミュニティの一員でいたい思いがあるのに、ひたすら謝られると関係のよそよそしさを感じてしまう
- 例えば、親しい家族が「ほんとにごめん」と言って簡単な頼みごとをされたら、嫌な気分になる
- 重要な納期を越えてしまうというような重要性の高い助けについてはこの通りではない。その場合、助けを得られたときはそれに見合った謝罪や感謝を告げる
- 人はコミュニティの一員でいたい思いがあるのに、ひたすら謝られると関係のよそよそしさを感じてしまう
- 言い訳をする
- 気が進まない様子で頼みごとをされた場合に、助けた側の充実感が失われてしまう。頼まれた側が気持ちよくなるようにリラックスして依頼する
- 頼みごとの内容の楽しさを強調する
- メリットを強調しすぎると、その内容に面白さを感じていない人は、逆にコントロールされていると感じてしまう
- 頼みごとは些細なものだとアピールする
- 適切な量でないとそもそも「助けられる状態」にならない。また、頼まれた側の想定とずれることにより、信頼を失うことになり、頼まれたものに対する責任感も失ってしまう
- 借りがあることを思い出させる
- これも頼まれた側がコントロールされていると感じてしまう
- 返報性は求められた助けに応じようとする力があるが、他人から言われるとコントロールされている感覚を生じさせる
感想
自分は昔から人に何かを頼むことを苦手に感じているので本書を読んでみたが、まず「人は自分が思っているほど頼みごとを断るわけではない」ことを知ることができたのは参考になった。
本書をまとめると「頼まれる人の主体性」が大切であり、それを削ぐような頼み方は避けるのが大切なのだと分かった。 そのためには、誠実な頼み方が一番であり、自分の立場や引け目を気にせず、包み隠さずに相談することが最も効果的なのだ。
当たり前のことなのだが、実践するのは難しい。普段から意識して頼めるようになりたい。