眠れないほど面白いギターと音楽理論の話


Posted on Mon, Sep 23, 2019
Tags guitar, music, scale

眠れないほど面白いギターと音楽理論の話

音程と度数 (interval, degree)

まず、ドレミファソラシド (C D E F G A B C) はそれぞれ音程と呼ばれる音の高さで定義されています。

細かくいうと、これらの音程はピアノの白鍵のため、1 オクターブは C, C#, D, D#, E, F, F#, G, G#, A, A#, B の 12 音程から成り立ちます。 (その実体は周波数のため、本来は無限に音程が定義できてしまうのですが、音程というデジタルな値を決めて理論だてているのですね)

C#, D# といった音程はピアノの黒鍵で鳴る音です。この 12 音程は半音ずつ差分があるということになります。

次に C と D、D と F といった音程間の隔たりを度数と言います。

C と C 自身は 1度、C と D は 2度、C と A は 6度となります。こう見ていくと、C と C# は 0.5度なのか? というとこれには 短2度という名前が付いています。 (エンジニア的には 0.5度のほうが覚えやすいのですが…)

ちなみに英語でいうと minor 2nd で、長 = major, 短 = minor ですね。

完全系 (Perfect)、長短系(Major, Minor)

さきほどの度数というのは細かく名前が分けられていて、C と C 自身は正確には 完全1度 (Perfect 1; P1) と言います。 この完全系というのは、伝統的に「とても調和のとれた度数」と考えられており、P1 の他には P4, P5, P8 があります。

C と F が P4, C と G が P5, C とオクターブ高い C が P8 です。簡単な曲なら C F G の組み合わせがよく出てきたりしますね。

ではそれ以外の度数はなんと呼ばれるのかというと、C と D が正確には 長2度、C と E が長3度、C と A が長6度、C と B が長7度、C と C# が短2度、… と続きます。

つまり、度数の違いは P1, m2, M2, m3, M3, P4, (A4 or d5), P5, m6, M6, m7, M7, P8, m9, … で表現されることになります。複雑ですね。 (途中 A4, d5 というものが出てきましたが、一旦無視してください 汗)

これら全部を覚えるというよりも、調和のとれた音である P4, P5 や後に出てくる M3 などをギターだと頻繁につかうということを覚えておけば大丈夫です。

和音(chord)

和音という言葉はよく聞くと思いますが、和音にも沢山の種類があります。ギターのコード (chord) といいますが、あれは和音を押さえているのですね。

代表的なのが長三和音 (Major Triad) ですね。いわゆる ドミソ (C E G) です。長三和音は P1, M3, P5 の音によって成り立ちます。いきなり、M3 と P5 が出てきましたね。

1 度離れた音程が同時に鳴ると、人間は不快感を感じるようです。(不気味の谷みたいなものでしょうか)この不快感が逆に不安や恐怖を起こすことから不協和音(dissonance)というものがあり、これはこれで面白い話があります。

ここで、ギターのメジャーコードを考えます。

  • C のメジャーコードは下の弦から、×, C(P1), E(M3), G(P5), C(P8), E(M10 ≒ M3)
  • D のメジャーコードは下の弦から、×, ×, D(P1), A(P5), D(P8), F#(M10 ≒ M3)
  • E のメジャーコードは下の弦から、E(P1), B(P5), E(P8), G#(M10 ≒ M3), B(P12 ≒ P5), E(P16 ≒ P8)

などなどと P1, M3, P5 で構成されていることがわかります。D のメジャーコードについては、D をルート音とするため、D が P1 とした場合に、F#(M3), A(P5) となります。

長三和音があるということは、短三和音もあります。英語でいうと Minor Triad でいわゆるマイナーコードになります。短三和音は P1, m3, P5 の音によって成り立ちます。

スケール (scale)

スケール(音階)は、曲の中で利用する音程の並び順を指します。

並び順? となりますが、例えば C メジャースケールが「ドレミファソラシド (C D E F G A B C)」となっていて、P1, M2, M3, P4, P5, M6, M7, P8 という度数になっています。

自分も最初この話を聞いたときは「何を当たり前のことを言っているのか」と思っていたのですが、この P1, M2, M3, P4, P5, M6, M7, P8 というのは 12 の音程の中から 7つ(P8 = P1)を選んでいます。 この選び方がメジャースケールなのであって、選び方は他にも自由に決められます

メジャースケールはピアノの白鍵のとおり、C からの 全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音 の上がり方をしています。覚えづらいですね。しかし、これがどうやら人間には明るく、心地よい音の並びのようなのです。 (人間の心は簡単なルールでは納得しないんですかね)

では、C マイナースケールはどうなっているかというと C からの 全音、半音、全音、全音、半音、全音、全音 の上がり方をします。音程は C, D, D#, F, G, G#, A#, C となっていて、度数は P1 M2 m3 P4 P5 m6 m7 P8 が度数になります。

  • メジャースケールは、P1, M2, M3, P4, P5, M6, M7, P8 という度数で構成されている
  • マイナースケールは、P1, M2, m3, P4, P5, m6, m7, P8 という度数で構成されている

他にも 音階 - Wikipedia にあるとおり、たくさんの種類のスケールがあり、音程の選び方でその曲の雰囲気が決まります。

音楽をやっていて、「この曲は C メジャースケール」と出てきたら、「C D E F G A B C がでてくるんだな」とひとまず考えればよいわけです。(かなりざっくばらんですが)

マイナースケールでも P4, P5 が使われるのは面白いですね。マイナースケールであっても、完全系は聞き心地がよいから使われるのですかね。

メジャースケール

  • C Major (# が 0つ): C, D, E, F, G, A, B, C
  • D Major (# が 2つ): D, E, F#, G, A, B, C#, D   
  • E Major (# が 4つ): E, F#, G#, A, B, C#, D#, E
  • F Major (♭ が 1つ): F, G, A, A#(=B♭), C, D, E, F
  • G Major (# が 1つ): G, A, B, C, D, E, F#, G
  • A Major (# が 3つ): A, B, C#, D, E, F#, G#, A
  • B Major (# が 5つ): B, C#, D#, E, F#, G#, A#, B

この # が xつ というのは、楽譜の先頭に記されていて、

(https://dn-voice.info より転載)

の # の数でスケールを表している理由がわかります。

マイナースケール

  • C minor (♭ が 3つ): C, D, D#(=E♭), F, G, G#(=E♭), A#(=E♭), C
  • D minor (♭ が 1つ): D, E, F, G, A, A#(=B♭), C, D
  • E minor (# が 1つ): E, F#, G, A, B, C, D, E
  • F minor (♭ が 4つ): F, G, G#(=A♭), A#(=B♭), C, C#(=D♭), D#(=E♭), F
  • G minor (♭ が 2つ): G, A, A#(=B♭), C, D, D#(=E♭), F, G
  • A minor (♭ が 0つ): A, B, C, D, E, F, G, A
  • B minor (# が 2つ): B, C#, D, E, F#, G, A, B

まず驚きなのが、A minor は C Major と同じ音程で構成されていることです。

実は、メジャースケールは「全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音」でマイナースケールが「全音、半音、全音、全音、半音、全音、全音」で構成されているため、メジャースケールから 1.5度(=m3) 分ずらすとマイナースケールとなります。 これを平行調といいます。

同様に G Major = E minor, D Major = B minor となります。

ペンタトニックスケール (pentatonic scale)

ペンタトニックとは penta (5つの) tonic (主音) で構成されるスケールのことです。スケールは自由に音程をピックアップすると話をしましたね。ちなみに、これまで説明したメジャー、マイナースケールはヘプタトニックスケールです(7 つの音程ですからね)。

ペンタトニックは 5つの音をピックアップしたスケールで、ギターのアドリブを行うときによく使われます。

  • メジャーペンタトニックのときはメジャースケールから 4, 7 番目の音程を抜かした P1, M2 (≒ M9), M3, P5, M6 (≒ M13)
  • マイナーペンタトニックのときはマイナースケールから 2, 6 番目の音程を抜かした、P1, m3, P4(≒ P11), P5, m7

マイナーペンタトニックはジャズでよく使われ、セブンスやイレブンスという言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

メジャーペンタトニック

メジャーペンタトニックでは、4, 7 番目の音を抜かしているため、ルート音から「全音、全音、(半+全)音、全音、(全+半)音」というスケールになります。

ギターでメジャーペンタトニックを弾く場合、覚えづらさがあるかと思いますが、フレットの移動するときに上記の順番を意識してみてください。

  • C Major Pentatonic: C, D, E, G, A
  • D Major Pentatonic: D, E, F#, A, B
  • E Major Pentatonic: E, F#, G#, B, C#
  • F Major Pentatonic: F, G, A, C, D, E
  • G Major Pentatonic: G, A, B, D, E
  • A Major Pentatonic: A, B, C#, E, F#
  • B Major Pentatonic: B, C#, D#, F#, G#

マイナーペンタトニック

マイナーペンタトニックでは、2, 6 番目の音を抜かしているため、ルート音から「(全+半)音、全音、全音、(半+全)音、全音」というスケールになります。

  • C minor Pentatonic: C, D#(=E♭), F, G, A#(=E♭)
  • D minor Pentatonic: D, F, G, A, C
  • E minor Pentatonic: E, G, A, B, D
  • F minor Pentatonic: F, G#(=A♭), A#(=B♭), C, D#(=E♭)
  • G minor Pentatonic: G, A#(=B♭), C, D, F
  • A minor Pentatonic: A, C, D, E, G
  • B minor Pentatonic: B, D, E, F#, A

2, 6 が抜けることで、スケールとしてはメジャーペンタトニックと音程がずれた形になります。これもメジャースケールとマイナースケールと同じ関係ですね。 そのため、C Major Pentatonic = A minor Pentatonic となり、同様に G Major = E minor, D Major = B minor の関係となります。

ギターの開放弦について

さて、これまで僕は「なぜ、ギターの開放弦は E A D G B E なのだろうか」と疑問に思っていました。

英語ですが、Standard Tuning: How EADGBE Came to Be にも書かれている通り、「ギターはフレットが長い分、弦の間の間隔を P4 だけ開けなければ弾きづらかった。またギターの元となった楽器も A D G B E で構成されていた」という説明があります。

それもあると思うのですが、G メジャーペンタトニックをみると構成音は G A B D E となっており、G メジャーの曲を非常に弾きやすい構成になっているかと思います。 かつて、どのようなスケールの曲がよく弾かれていたのかまで調べきれていないのですが、ギターの元となった楽器が弾かれていた時代に流行った曲が弾きやすかったのでしょうか。

そう考えると夜も眠れなくなってきます。

参考