スタンフォードの自分を変える授業

自己コントロールの手法を学ぶ

Posted by amasuda on October 15, 2017

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スタンフォードの自分を変える教室

この本のポイント

  • 自分を変えるためには、自分を戒めるのではなく、自分をより理解する必要がある
  • 人類は数百万年前に誕生し、脳が目の前の刺激に飛びついてしまうのは当然である。それを理解した上で、1. どうしたらその刺激に飛びつかずに済むのか 2. どうしたら自分の目標へ近づくプロセスに飛びつけるようになるのか を常日頃から考える必要がある
  • (宗教性を除いた)瞑想は刺激に対する自分の反応を理解し、上記の 1,2 について考えるプロセスであり、これを定期的に行うことは自分を変えるために有効である

人の意志力の性質とは

この本の面白さは、なぜ人は自分の意志とは異なり、同じ過ちを犯してしまうのか、どうして我慢できなくなるのかを科学的に説明している点である。

一般的に、この手の本(自己啓発系)は「生活習慣の改善で…」や「呼吸法が…」などその根拠を示さずに方法だけを提示することが多い。そして、精神論や過去の偉人、自分の経験談を持ち出して、最後は「目標のために頑張ることが大切である」のような結論で締めくくることが多々ある。 そのような書籍は読んでいる最中は、「なんだかできそうな気がする」と高揚して、一時的には気分が良くなるのだが、実践してみると続かなかったり、科学的な根拠に基づかないため効果がなかったり、薄かったりする。

一方でこの本は心理学博士である McGonigal 氏が過去の実験から意志力について考察し、その改善策について述べている。 もちろん事例として上げられている実験では古いものや、もともと心理学の実験自体、人間を扱うことによる再現性の低さを指摘されていたりするが(心理学の研究成果の再現性は本当に低いのか-心理学者からの考察- — 京都大学)、学生やラットに対して行った実験結果からの考察が述べられている分、より納得感がある。

この記事ではこの本において面白いと感じた点について述べていく。

自分に対する理解を深める

意志力が強いと感じる人ほど、その強さを過信し、自分なら後で挽回できると思いがちである。大概の場合、時間がなかったり、体力が続かずにやるべきことができなかったりする。

自分のそうした性質や「あ、今、自分を甘やかそうとしている」タイミングや身体の反応を観察することで、未然に意志力の低下を防ぐことができる。これは、Google の Search Inside Yourself でも述べられており、宗教性を排除した瞑想により、自己認識を深めるということが、自分をコントロールする訓練になる。

意志の強さは、心拍の変動量でわかる

ストレスを感じると交感神経系が活発になり、心拍数が増加して変動が低下する。これは臨戦モードで心のコントロールがしづらい状態と言える。

一方で、ゆっくりと呼吸を行い、リラックスすることで副交感神経系が活発になると、心拍数は減少し、吸ったり吐いたりする際に心拍数の変動が大きくなる。この状態だと意志のコントロールがしやすく、誘惑に駆られにくくなる。(学生に対する実験や依存症患者の反応を通じての考察)

睡眠不足は意志力の低下をまねく

睡眠が不足すると、血中のグルコースが吸収されづらくなり、疲労を感じやすくなる。その状態は、意志力に影響を持つ前頭前皮質の働きを妨げることになる。その場合、視野が狭くなり、短期的な快楽を欲しがってしまう。

意志力を発揮するのは、筋肉を使うのと似ており、十分に休息と栄養がなければ発揮しづらい。そのため、何か「やりたい」ことを行う場合は寝る前ではなく、起きてすぐの方が睡眠を取った直後のため意志力が発揮しやすい。

サラダを置くと、ハンバーガーが売れる

意志力は有限のリソースのため、サラダが並べられるハンバーガー店だと、サラダを選択するか考えたお客はその想像に満足してしまい、ハンバーガーを購入してしまう。

同じく何かをしようと思うこと自体が意志力を使うことになるため、行って当たり前という意識が必要。(こんなに頑張ったんだから… -> ここまでで通常通り)

ドーパミンは満足感の予感を運んでくれるが、満足自体は提供しない

マウスに自分の報酬系を電気刺激させる実験では、マウスは怪我を負いながらも脳への電気刺激を頻繁に行った。 もしこれがお腹を満たすような反応であれば、マウスは一度満足感を得ればそれで刺激を終えるはずである。しかし、頻繁に刺激を行おうとするのは、それでは満足していないからである。 つまり、一時的な欲求の発散は満足感を得たような気がしつつも実際はそうなっていない。依存症も同様の原理でやめることが難しい。

Youtube は動画を再生し終えたらすぐに次の動画が自動的に再生するような機能を実装している。これによって、見ている人にすぐ新しい楽しみを提供しますよ、と認識させているが、これも次の動画への期待感を高め、長く動画を見てもらおうとする策略である。

ドーパミンが発生した場合は、すぐに満足感を得ようとはせず、呼吸を整えて数分待ってみると良い。その最中に「これで真の満足感は得られない」ことを意識し、身体の反応に気を配る。ドーパミンはその性質上、時間が経てば薄れていくため、一過性の風だと捉えればよい。

また、実際にストレスを解消するためには、ドーパミンを放出して報酬系を刺激するのではなく、深呼吸をするなどリラクゼーションを行うことで身体を弛緩させる必要がある

どうにでもなれ効果 (What the hell effect)

意志力の強い人ほど自分の犯した判断(ダイエット中に甘いものを食べた)に対して、厳しく対応しようとしてまた意志力が必要になり、ドーパミンを発生させることをしたくなってしまう。脳にはそうした性質があるために、悪循環を生じさせてしまう。

その悪循環に陥らないようにするためには、自罰的になるよりも、客観的に自分を見つめた上で許した方がよい。これはアドラー心理学でも同じことが述べられている(-> 普通でいる勇気)。その際のコツとしては、 失敗してしまったときのことを思い出し、失敗しない場合はどうなるのかをイメージする こと。

瞑想がなぜ有効なのかというと、一歩引いたところから自分を見つめ、分析することで、自分にどういった傾向があるのかを理解が進むからである。普段から意識的に自分を客観視している人でもなければ、瞑想を行って自己コントロールの方法を分析することが大切である。

結論

冒頭に述べたとおり、この本は自己コントロールについて様々な心理学実験をもとに考察されている(心理学実験の再現性について考慮が必要なものの)。その結果から、自己コントロールに必要なのは 自分への理解(コントロールを失う前の挙動や状態など)を深め、コントロールを失う前に気づけることが大切である。そして、欲求や刺激に対して押さえ込むのではなく、一過性の風だと思って深呼吸しながらやり過ごす ことが鍵となる。